東京で『交通事故』に強い弁護士

交通事故の治療費の打ち切り

  • 文責:所長 弁護士 石井浩一
  • 最終更新日:2024年4月8日

1 保険会社からの治療費の打ち切りとは

交通事故の被害者は、多くのケースにおいて、病院や接骨院等の医療機関の窓口でお金を支払うことなく治療を受けることができます。

これは、交通事故の被害者が医療機関に通院するための治療費を、保険会社が医療機関に対して直接支払っているからです。

このように、保険会社が医療機関に交通事故の治療費を直接支払う対応をすることを、「一括対応」と呼びます。

しかし、保険会社もいつまでも治療費を払い続けてくれるわけではありません。

交通事故の大きさや怪我の程度にもよりますが、一定の期間が経過すると、「一括対応」を中止し、治療費の支払いを打ち切ることがあります。

保険会社が一括対応を中止して治療費の支払いを止めることを、「治療費の打ち切り」と呼ぶことがあります。

2 治療費を打ち切られた後の治療はどうなるのか

治療費を打ち切られてしまった場合には、保険会社から医療機関へ治療費が支払われなくなるため、交通事故の治療費は被害者の方がご自身で負担しなければならないことになります。

そのため、治療のために通院した際には、原則として窓口で治療費を支払うことになります。

3 不当に「治療費の打ち切り」をされないための方法

不当に「治療費の打ち切り」をされないようにするためには、以下の3つの点に注意することが重要です。

⑴ 定期的に医師の診察を受ける

最も大切なことは、適切な頻度で定期的にしっかりと医師の診察を受けることです。

交通事故で負傷した場合、怪我の痛みが残っていたとしても、どのくらい痛みがあるのか、どんな症状が残っているのかについて、外から見ただけでは分かりにくいケースが多くあります。

そこで、保険会社は、医師の診断書に書いてある症状や、どれくらいの頻度で病院に通院しているのかを確認して、交通事故の治療費をいつまで支払うのかについて決める場合が多いというのが実情です。

そのため、定期的に医師の診察を受けることが大切です。

特にむちうちのように、自覚症状はあっても他覚的所見が分かりにくい場合は、定期的な通院を続け、医師に対して症状をしっかりと伝えることが重要となります。

⑵ 保険会社の医療照会には協力する

上記3⑴のとおり、保険会社は医師の判断を参考にして、交通事故の治療費をいつまで支払うのかについて決める傾向があります。

そこで、治療継続中に保険会社から、医師の診断書等の取付同意書や、医療照会の同意書が届くことがあります。

これは、保険会社が現在の治療状況を知るために必要なものとなります。

同意書を提出しなかった場合、保険会社は治療状況などを知ることができません。

治療として必要か否かを確認できない場合、通常は保険会社は治療費を支払い続けることはしません。

したがって、保険会社から医師の診断書等の取付同意書や医療照会の同意書が届いた際には、速やかに協力するようにすべきです。

⑶ 保険会社としっかり話をする

保険会社から治療の状況の確認があった際には、医師から聞いた内容や通院の状況をしっかりと答えましょう。

また、まだ治療が必要である場合には、そのことをはっきりと伝えて、治療費の支払いを続けてもらえるように依頼しましょう。

保険会社の担当者からの連絡に対して、面倒だから、時間が無いからなどの理由できちんと対応せずにいると、一方的な判断で打ち切りがなされてしまうおそれがあります。

これは、保険会社には被害者の方がどのような治療を受けているのか、今後も治療を続ける意向があるのかが分からないためです。

なお、通院の際には、以下の点に気を付けてください。

① 医師に症状をきちんと伝える

医師には、痛い部分、違和感・痺れがある部分について、きちんと伝えてください。

医師に話した内容は、有利にも不利にも決定的な証拠になります。

そのため、症状を伝える時には、よく落ち着いて、整理をして、誤解がないように、すべて漏らさず伝えるようにしてください。

例えば医師から「良くなってきましたか」と聞かれた際に、まだ継続的な痛みが残っている場合には、医師に気を使って安易に「良くなっています」と答えるのではなく、「この部分がまだずっと痛いです」としっかり伝えるように気を付けてください。

② 病院や整形外科に定期的に通院する

交通事故の怪我を治療する上では、接骨院・整骨院・鍼灸マッサージ院での施術が大変有効なケースも多くあります。

一方で保険会社は、病院や整形外科など、医師の診察をどのくらいの頻度で受けているかを重視する傾向があります。

そのため、仮に接骨院や整骨院にしっかりと通院しているケースであっても、病院や整形外科には定期的に適切な頻度で通院するようにしてください。

なお、どのくらいの頻度で病院や整形外科に通院すればよいかは、怪我の内容や大きさによって異なります。

医師会によっては、重大な怪我の患者については2週間に1回は診察するように指導しているところもあるので、ひとつの参考になるかと思われます。

4 不当に「治療費の打ち切り」をされてしまった後の対応方法

不当に「治療費の打ち切り」をされしまった場合の対応方法としては、以下の4つの方法が考えられます。

⑴ 保険会社に交渉して「治療費の打ち切り」を取り消してもらう

治療がまだ必要であるにもかかわらず、保険会社の誤解により治療費を打ち切られてしまった場合には、治療が必要である根拠を示して、一括対応の継続を交渉することが考えられます。

治療が必要である根拠としては、医師の意見やまだ痛みが残っていて通院が必要である理由を示す必要があるでしょう。

治療の打ち切りが宣言されてからあまり時間が経ってしまうと、保険会社も対応することが困難になります。

そのため、治療費の打ち切りが宣言されたら速やかに交渉を始める必要があります。

⑵ 通勤中・業務中の交通事故であった場合は労災への切り替えを行う

通勤中・業務中の交通事故であった場合には、その交通事故の治療(費)については労災の補償対象にもなります。

そのため、いまだ治療が必要であるにもかかわらず、保険会社から不当に治療費の打ち切りをされた場合には、代わりに労災から治療(費)を補償してもらう方法があります。

ただし、労災を使う場合には、勤め先の会社が十分に対応してくれないケースや、トラブルになってしまうようなケースも少なくありません。

そのため、労災を使うことに対して、勤務先の了承を得ることが事実上必要となる場合もあります。

⑶ 通勤中・業務中以外の交通事故であった場合は健康保険で通院する

通勤中・業務中以外の交通事故であった場合、健康保険を使うことで、費用を抑えて通院を続けることができます。

症状固定までの間、健康保険で通院したときに負担した費用については、後から保険会社に支払ってもらえるよう交渉をすることができます。

治療費が打ち切られた後の通院については、こちらの記事もご覧ください。

⑷ 自賠責保険に対して被害者請求を行う

被害者請求とは、交通事故の加害者が加入している自賠責保険に対して、ご自分で負担した治療費等を請求する方法です。

被害者請求では、相手方保険会社が、治療が必要であるにもかかわらず不当に「治療費の打ち切り」をした場合、被害者の方が自ら治療費を負担した後に、自賠責保険に対して治療費の補償を求めることになります。

治療費・慰謝料・休業損害等すべてを合わせて、傷害部分については120万円までという枠がありますが、相手方保険会社が治療費を払ってくれない場合であっても自賠責保険から支払われる可能性があります。

5 弁護士に依頼するメリット

弁護士に依頼をするメリットは、大きく3つあります。

⑴ 適切な通院方法等についてアドバイスが得られる

保険会社から不当に短い期間で治療費の打ち切りを受けないためには、適切な方法で通院することや、ご自分の症状について医師に対して適切に伝えることなどが重要になります。

適切な通院方法は、事故の大きさや怪我の症状・程度等によって、 個々のケースごとに異なります。

「医師にどう説明していいのかわからない」「病院でこんなことを言われたんだけど、どうすればいいの」「どのくらいの頻度で通えばしっかり治療費を払ってもらえるのか」等、事故に関する心配について弁護士から適切なアドバイスを受けることができるので、安心して通院することができます。

⑵ 保険会社の対応を任せられる

保険会社の担当の中には、被害者想いでしっかり治療費を出してくれる担当者もいれば、とにかく早く治療費を打ち切ろうとする担当者もいます。

あまり被害者想いではない担当が窓口になってしまった場合には、ただでさえ怪我で辛い思いをしているところに、保険会社の担当から心無い言葉をかけられ、さらに辛い思いをする場合もあります。

弁護士にご依頼いただいた場合には、弁護士が保険会社対応の窓口になることができるため、直接保険会社と対応をしなくても、弁護士に交渉を任せることができます。

しかし、個々の事情や状況によっては、ご自身で直接保険会社と話した方が良いケースもあれば、弁護士が間に入って話した方が良いケースもあります。

どちらにするのがよいのかは、まず弁護士に相談すると良いでしょう。

⑶ 被害者請求などの手続きについて任せられる

被害者請求などの手続きは、被害者本人だけでもできないことはありません。

しかし、ご自身のお力だけで資料を整えたり、追加の証拠を提出したりすることは、なかなか難しい作業になります。

弁護士にご依頼いただいた場合、弁護士が手続きのお手伝いをさせていただくことができます。

そのため、手続きの方法が分からなくて被害者請求の手続きを進められないといった事態を避けることができます。

6 治療費の打ち切りに関して弁護士に依頼した場合の費用

弁護士費用については、どのくらいかかるのか事務所によって大きく異なります。

当法人では、交通事故ついてのご相談を、原則無料で承ります。

費用の見通しについても、弁護士からきちんと説明したうえで、ご依頼いただくかどうかを決めていただくことができます。

東京やその周辺にお住まいで、交通事故の治療費について心配がある方は、当法人へお気軽にご相談ください。

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