東京で『交通事故』に強い弁護士

信号のない交差点で交通事故に遭った場合の過失割合

  • 文責:所長 弁護士 石井浩一
  • 最終更新日:2023年12月18日

1 交通事故における過失割合を決定するに際して参照される資料

交通事故における過失割合とは、事故を発生させる原因となる不注意が、各当事者に、それぞれどの程度あったのかという問題です。

例えば、道路交通法に従って信号待ちで停車していたところ、後ろから急に追突されたというような場合には、追突された側には何らの義務違反も不注意もありませんので、過失はゼロであると判断されます。

これに対して、交差点などで出会い頭に衝突事故が起きた場合などには、通常は当事者双方に過失が認められるのが一般的です。

もっとも、不注意という主観的な出来事の程度を比較するのは容易ではありません。

そのため交通事故においては、東京地裁民事交通訴訟研究会が編纂した「民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準[全訂5版]別冊判例タイムズ38号」(以下、「判例タイムズ38号」といいます。)という文献に記載されている基準に基づいて過失割合を判断する運用が一般的に行われています。

2 信号のない交差点で過失割合を決める際に重要となる道路幅

判例タイムズ38号では、信号の無い交差点内で出会い頭事故が起きた場合については、左方優先の原則(道路交通法36条1項1号)を重視して、左方から来た車の過失割合を40%、右方から来た車の自動車を60%として過失割合を計算することを原則としています。

もっとも、道路の幅に大きな差があり、一方の道路が他方の交差道路より明らかに幅員の大きな道路であるような場合ですと、大きな幅員の道路の方がより優先性が高いと判断されます。

この場合、広い幅員の道路を走っていた方の当事者の過失割合は30%、狭い道路を走っていた方の当事者の過失割合は70%として判断されるのが基本的です。

なお、どの程度の幅員の相違があれば「明らかに広い」と判断されるのかについては明確な基準があるわけではなく、「客観的にかなり広いと一見して見分けられる」か否かという観点で区別がなされています。

3 一時停止線や優先道路の場合の過失割合

また、道幅の違い以上に過失割合の判断に影響を与えるのが、一時停止の有無等による優先関係です。

一方の道路に一時停止の指示があり、一方当事者がその指示を無視して道路に進入し事故が起きた場合、当該当事者の注意義務違反の程度は甚だしいものであるといえます。

そのため、このような場合には、一時停止を無視した側には80%程度の過失が認められるのが一般的です。

また、優先道路の表示が明確にある場合や、交差点の中央までセンターラインが引かれている道路について「優先道路」と評価される場合には、さらに優先道路側の優先性が高いため、非優先道路側の当事者の過失割合は90%程度と判断されることが一般的です。

4 過失割合で揉めている時に有効となる証拠

このように、信号のない交差点内で出会い頭に発生した事故については、道路の幅員や一時停止、優先道路の該当の有無等によって過失割合が大きく異なります。

また、これら以外にも個別の事案で、一方の当事者が明らかに先に交差点に入っている場合等には、上記の過失割合からさらに過失割合の調整が行われます。

また、双方の車両のスピードがどの程度であったかも考慮されます。

このように、交差点での出会い頭の衝突事故では、様々な事実関係が過失割合に影響を与えます。

そのため、その一つ一つの事実関係について、きちんとした証拠を用意することが必要となります。

典型的な証拠としては、警察に人身事故の届出をした場合に作成される、実況見分調書という刑事記録などがあります。

またその他にも、近年ではドライブレコーダーの画像なども有効な証拠となることが多くあります。

ドライブレコーダーの画像については、うっかり上書きされてしまわないよう、事故後はデータを取り出すなどして、早期に証拠の保全を図る必要があります。

同様に、近隣の店舗等の監視カメラの画像が証拠となることもあります。

また、映像の記録に比べると正確性を争われるリスクはあるものの、事故の目撃者の証言等も伝統的に重視されてきた証拠であると言えます。

5 交通事故での過失割合の交渉は弁護士に相談

このように、過失割合を争点として争っていくには、基本的な過失割合の決定方法の基準に関する知識に加えて、個別事案において過失に影響を与える多様な事実関係を整理し把握しなければなりません。

さらに、その一つ一つの事実関係について証拠を吟味して、立証可能かを検討し交渉の戦略を立てるという、地道な作業が必要となります。

過失割合を争うことは、決して簡単な手続きではありません。

交通事故の被害に遭われた際には、お一人で交渉をしようとするのではなく、一度、弁護士までご相談いただくことをおすすめします。

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